samedi 30 août 2008

わたしは忘れない3



 2008年7月30日 初版第一刷 5000部が発行された。


あとがきから

「おじいちゃんたちがいるのに、一緒に過ごさないのはもったいない。」
レアが言っています。うちの二人の子どもたちも、いつも同じことを言っていました。そして、母親であるわたしは、いつもこんなふうに説明していたのです。
「お母さんたちには、いろいろと大人の事情があるの。仕事は休めないし、おばあちゃんの家は遠いし、おじいちゃんは気難しくて会えばけんかをしてしまうし、田舎に帰ると親戚がうるさいし、夏休みには空港が混んでいるし。。。」
おばあちゃんちに連れて行けない理由は、本当にいろいろあるんですよ。でも、そう言っているうちに、我が家の子どもたちは、おじいちゃんに一回しか会えませんでした。まだ若いと思っていたおじいちゃんが、病気にかかり、あっという間に帰らぬ人となってしまったからです。おじいちゃんとの思い出を、もっと作ってあげられなかったことは、わたしにとって一生心に残るであろう、大きな後悔の傷となりました。
そんな悲しみの日々、わたしは心休まるお気に入りの場所、町の小さな図書室を、さまよっていました。そして、ヤエル・ハッサンさんの本に出会いました。
『だれでも、目の前にいる大好きな人と、いつか別れる日が来るなんて考えもしない。その日が来てしまった時に、「もっとたくさん好きだと言っておけばよかった」と後悔するのね。大好きな人にはいくら好きだと言っても、言い過ぎることはない。だから、言える時に思うぞんぶん、好きだよって言うべきなんだよね。おじいちゃんにも、もっと言っておけばよかった』
この部分を読んだ時に、涙が止まりませんでした。中学の時も、大人になってからも、家族に対しても、いつも、だれかと別れた瞬間に、好きだと言い足りなかったことを後悔してきたはずでした。そして、また父にも言い足りていなかったのです。
レアのおじいちゃんは生きていました。大人たちが歩みよることで、再会することができました。はじめはとっても気難しく、暗く、冷たいおじいちゃんでした。しゃべってくれないから、レアにはおじいちゃんがなにを考えているか分かりません。おじいちゃんには秘密がありそうです。大人たちはみんな何やら隠しごとをしています。でも、レアはあきらめない。いたずらをしたり、意地悪を言ってでも、ふり向いてもらおうとします。そして、おじいちゃんは、少しずつ心を開いてくれるようになります。
おじいちゃんには、とても辛い過去がありました。アウシュビッツで行われた、ユダヤ人大量虐殺の生き残りだったのです。ハッサンさん自身のおじいさんとおばあさんは、ほかの多くのユダヤ人とともに罪もなく殺され、お父さんだけが生き残ったのです。このハッサンさんのお父さんが、レアのおじいちゃんのモデルとなった人物です。
ヤエルさんは、この翻訳本が出版されるにあたって、日本の子どもたちのために、こんな言葉を寄せてくださいました。
《第二次世界大戦のとき、男性・女性・子ども・赤ちゃん、たくさんのユダヤ人が、ユダヤ教を信仰しているというその理由だけで、ナチ党に虐殺されたことを忘れないでほしいから、そして、殺された六十万人もの人々を尊重する気持ちを失わないでほしいから、世界中の子どもたちに、ショアーの事実を伝えつづけていきたいのです。そして、あのような残忍きわまりない行為が、どこにも、だれにも、再び行われることのないように、いつか大人となるあなた方に、注意深く世界を見つめてほしいと願いながら、わたしはこのお話を書きました。》
宗教のこと、人種のことは、歴史と深い関わりがあって、とても難しいかもしれませんが、この本の中では、あなたたちと同じように疑問を持ったレアが、あなたたちに代わって、おじいちゃんに質問してくれます。わからないことや疑問に思ったこと、違うと思ったことなどがあったら、どうぞ、先生や友だち、家族といっしょに、話し合ってください。学校の友だちとの小さな争いをなくすことは、社会の、そしてまた世界の争いをなくすことに繋がっているかもしれません。

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